【フィルムカメラ写真・露出計の使い方】スポットメーターによる輝度差を利用した露出設定方法


【フィルムカメラ写真・露出計の使い方】輝度差露出設定方法 作例写真1

目次

セコニックビュースポットメーターL-438を使いこなす!

最近手に入れた、「セコニックビュースポットメーターL-438」を完全に使いこなすために、ここ最近は、全ての撮影にこの露出計を使用し、1コマ毎の撮影データをメモ帳アプリに記録して、面倒ながらマニュアル露出撮影を楽しんでいます。

単体露出計を使い出したのは、カメラ内蔵の絞り優先AEに不満を感じたことがきっかけです。

私は街中のスナップ写真撮影しか行っていないため、時間をかけて正確な露出を求めるよりも「サッとカメラを構えて、速やかにシャッターを切り、スッとその場を立ち去る。」ことに重点を置いていました。

しかし、最近はスナップ写真と言っても、通りすがりの人物をファインダーフレーム内に配置することが少なくなったため、1枚の写真を撮影するための時間も多く取れるようになりました。

そして、じっくりと1枚の写真を撮るようになると、1枚1枚の写真全てが、イメージしたトーンに仕上がっていないと、納得出来なくなってきました。

今までは、フィルム1ロール中に良いと思える写真が2枚か3枚あれば満足していたのに、最近は、「失敗写真」は数枚以内に抑えたいという欲望が湧いてきたのです。

私がここで言う「失敗写真」というのは、

  1. 手ブレしている写真
  2. ピントが合っていない写真
  3. 露出が狂っている写真

この3つを指していますが、1つ目はシャッタースピードをなるべく高速なものを選ぶとか脇を締めて静かにシャッターボタンを押すことで対処できますし、2つ目はファインダースクリーンのスプリットイメージを活用して時間をかけてしっかりピントを合わせることで対処できます。

ここで問題にするのは3つ目です。

カメラ内蔵の絞り優先AEで撮影しても、またマニュアル露出で適正となるシャッタースピードと絞りを合わせても、結局のところ、中央部重点測光システム自体に限界があり、カメラまかせに露出を決定していては、大きく狂ってしまうことが、時々(多々?)あるのです。

露出を自分が思うようにコントロール出来ていないとどうなるのかというと、

自分がイメージしたトーンの写真には仕上がらない

のです!

モノクロフィルム写真の最大の魅力は、「トーン」にあります。

それはデジタル写真ではなかなか得にくいものだと考えています。

カメラ内蔵露出計を使用して大きく狂ってしまう具体的な例としては、ファインダーフレーム内全体の、輝度差が少ない日陰のシーンなどが、実際より明るく(ネガ上では濃く)写ってしまうことが挙げられます。

ご存知の通り、カメラ内蔵の反射光式露出計は、全体が暗めのシーン(例えばゾーンⅢの暗さ)では、全体をゾーンⅤの濃度に写し込もうとします。

つまりは明るく写ってしまいます。

逆に、全体が明るめのシーン(例えばゾーンⅧの明るさ)では、ゾーンⅤの明るさとなり、暗く写ってしまいます。

自分好みの写真に仕上げるには、「暗いものは暗く(ネガ上では薄く)、明るいものは程々に明るく(ネガ上では程々に濃く)」撮りたいのです。

そうすることによって、自分好みのトーンが描けるということが、遅れ馳せながら、最近分かりだしました。(^^)

一般的には、フィルムラチチュードの範囲内であるならば、濃いネガならばマルチグレードの1号フィルターや2号フィルターを使用して引き伸ばし、薄いネガなら4号フィルターや5号フィルターを使用して引き伸ばせば、同じような写真に仕上げられるということになっているようですが、実際にはちょっと違うようです。

これはネガをデジタルスキャンして、Lightroom等でRAW現像する場合でも同じことが言えます。

おそらくですが、これはフィルムの特性曲線が直線ではなく、カーブを描いていることによって、濃いネガと薄いネガでは使っているカーブの部分が違うからだと推測しています。(よく分かりません・・・^_^;)

濃いネガを使用して、全体を暗いイメージにしたいと思っても、納得いくトーンには仕上げられないということです。

結論を申しますと、フィルム写真は、引き伸ばし時やRAW現像時に手を加えられる範囲が限られており、「ネガ上で完全に自分好みの絵を仕上げるよう、露出設定と現像処理を行う必要がある」ということになります。

これらのことを踏まえて、スポットメーターをどのように使えば自分好みの絵が仕上げられるのかを、自分なりに探ってみました。

 

アンセル・アダムスのゾーンシステムを試してみる


フィルム写真に長年携わっている人なら誰でも知ってる、アンセル・アダムス!アンセル・アダムスと言えばゾーンシステム、ゾーンシステムと言えばアンセル・アダムスですね!

なんて言ってる私も、アンセル・アダムスが書いたゾーンシステムの書籍を、実際に読んだことがありません。(^_^;)

また、ゾーンシステムについて、全く知らないという方は、私が言うのもなんですので、他のサイトで調べて下さいね。(^^)

私がゾーンシステムに関わったのは、今から30年程前。「ファインプリントテクニック」という本の中に記載されていた「ゾーンシステムの実践」をそのまま実践したときです。

使用しているカメラ・カメラレンズ・フィルム・フィルム現像液・引き伸ばし機・引き伸ばしレンズ・印画紙・印画紙現像液までの、全てのシステムを含めたゾーンシステムの設定が、あまりにも面倒臭くて、仕舞いには何をやっているのかも分からなくなり、挫折しました。(^_^;)

今思えば、その当時の日本では、ゾーンシステムを本当に理解している人自体が少なく、アンセル・アダムスが言いたい内容を歪曲して、難しく解釈してしまったのかも知れません。

アンセル・アダムスのゾーンシステムを、撮影方法だけについて簡単に言うと

ディテールが必要なシャドウ部分を測光し、それをゾーンⅢに配置すること

以上、それだけ!?です。(^_^;)

つまりは、反射光式スポットメーターで測光したシャドウ部分はゾーンⅤとして記録されますので、2EV分露光を少なくしてゾーンⅢに持ってくるということ。

ハイライト部は成り行きに任せて、もし露出オーバーになっているようなら、引き伸ばし時の焼き込みで対処するか、または、撮影時に印画紙のラチチュード範囲である5EV差を超えていると分かっているようなら、フィルム現像時間を標準現像時間よりも切り詰めて軟調にし、5EV内に収めるようにする。(でも、ロールフィルムでは難しいですよね。^_^;)

もちろん、ゾーンシステムを活用した撮影を行う前に、使用するフィルムの実効感度を求めることと、ゾーン0〜ゾーンⅩまでの濃度を適切にフィルム上に記録する標準現像時間を知っておく必要があります。

それは過去の記事である”【モノクロ写真】適切なフィルムネガ濃度って?好みの写真に仕上げる現像・ISO感度・露出について“を参照して下さい。

しかしながら、この「ディテールが必要なシャドウ」というキーワード、これが結構厄介なのです。

熟練のゾーンシステム使い?の方なら、風景を見ただけで、

「あのちょっと暗くなってる部分のディテールはしっかり描きたいな!だからあそこがゾーンⅢに配置するシャドウだな!」

ってな具合に、経験と勘から即座に分かってしまうのかも知れませんが、私にゃ、サッパリですょ。(^_^;)

ヨセミテ国立公園内の風景ならそれも分かりやすいのかも知れませんが、街中の日陰の中の白壁や黒壁などが混在するスナップ撮影の場合、ディテールが必要なシャドウ!?・・・って言われてもねぇ・・・。(^_^;)

さらに、それが上手く実践できたとしても、自分好みの絵にはならないことが分かりました。

そこで私は、今までにスポットメーターを使用して撮影したネガの濃度と撮影データを注意深く観察した結果、そこにある法則を発見しました!

それが次にご紹介する、「輝度差を利用した露出設定方法」なのです!

 

至極簡単!経験や勘は必要無し!輝度差露出設定方法とは!?

 

まず最初に、これから記載する「輝度差露出設定方法」は、私個人の好みの絵を描くよう撮影するための露出決定方法であり、一般的ではないことと、万能でもないことをご理解下さい。
また、真のゾーンシステムを問題無く実践している人もまた当然、必要としていないでしょう。(^^)

 

Ⅰ.ゾーンシステムと同じように、シャドウ部を重要視する

 

この輝度差露出設定方法も、シャドウ部分の露出をメインに考えます。

なぜなら、モノクロフィルム写真では、

ネガフィルムに全く写っていないものは、現像時に増感現像してもリカバリー出来ないから

です。

写っていないものは、どんなに現像を頑張っても、真っ黒(ネガ上では透明)なままということですね。

これは写真技術的なことであり、フィルム写真技術者は、シャドウからハイライトまでの全ての階調が綺麗に表現(記録)されていることに重点を置くことが多いようです。

反対に写真芸術的には、真っ黒なシャドウを意図的に写真の大部分に配置することもあります。

私はどちらかというと、ちょうどその中間という曖昧なスタンスです。(^_^;)

フィルム写真の面白さは、芸術的なことだけを考えてしまうと、折角の化学技術的な面白さをスポイルしてしまいますし、反対に技術的なことだけを考えてしまうと、写真を芸術的に鑑賞するということが薄れてしまい、「この現像時間が正解なのだから、この絵で正しいのだ!」なんて、杓子定規に決めてかかることもあるでしょう。

私はフィルム写真には、どちらの面も欠けてはいけないように思っています。

ですから、この輝度差露出設定方法も、ゾーンシステムまでのシャドウディテールは求めていません。

輝度差露出設定方法でのシャドウ部分の測光方法は、

最も暗い部分を測光する

最も暗い部分というよりは、撮影するシーンを頭の中でモノクロに変換して、最も黒い黒色に一番近い部分を計測します。

ゾーンシステムのように、「ディテールが必要な・・・」なんてことは考えずに、一番暗い部分を計測すれば良いのです。(^^)

疑問の一つとして、「それなら、どのシーンでも全部同じ暗さになるんじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、ちゃんとシーンによって暗さのレベルは違います。

日陰の壁面など、どこも均一な明るさであるような場合は、壁の中に黒色の部分があれば、そこが最も暗い部分となりますし、実際にスポットメーターを当ててもその部分が最も低い数値を示すはずです。

明るさを見ると言うよりは、プリントして黒色になるような部分を計測します。

 

Ⅱ.ハイライト部分も計測し、露出設定に反映させる

 

写真は、ハイライトも重要です。

個人的には、ハイライトが飛び切った写真は、シャドウが潰れてしまった写真よりも、嫌いです。(^_^;)

ハイライト部分も計測して、露出設定に活かします。

この輝度差露出設定方法での、ハイライト部分の測定方法は、

最も明るい部分を測光する

簡単ですね。

但し、太陽がファインダーフレームに入るときは、太陽は測らないで下さい。

メーターが振り切れるだけですし、目を傷めます・・・。(^_^;)

青空や雲ならOKです。

 

Ⅲ.シャドウ部分とハイライト部分の輝度差を読み取る

 

シャドウ部分とハイライト部分、それぞれの測光が終わったら、次はその輝度差(EV値差)を読み取ります。

例えば、シャドウ部分が6EVで、ハイライト部分が11EVであった場合、その輝度差は5EVとなります。

この輝度差が、今回ご紹介する「輝度差露出設定方法」の肝となりますので、その数値を覚えておきます。

 

Ⅳ.シャドウ部分の測定値を、輝度差に対応したゾーンに設定する

 

次にシャドウ部分の測定値を輝度差に対応したゾーンに設定させる訳ですが、簡単に言うと、輝度差が5EVの時はゾーンⅡに設定します。そして輝度差が2EVの時はゾーンⅢに設定します。また輝度差が8EVの時はゾーンⅠに設定します。

お解りになりましたでしょうか?

写真で説明したいと思います。

輝度差露出設定方法ゾーン計算尺2

上の写真はセコニックズームメーターL-228露出計に付いている計算尺の写真です。

写真では、シャドウ部分が6EVでハイライト部分が11EV、輝度差が5EVの時の場合の例です。

輝度差が5EVの時は、ゾーンⅡの位置にシャドウ部分EV値を合わせます。(ISO100の例)

使用するシャッタースピードにあった絞り値を選択して撮影します。



輝度差露出設定方法ゾーン計算尺1

次に、上の写真は、シャドウ部分が8EVでハイライト部分が10EV、輝度差が2EVの時の場合の例です。

輝度差が2EVの時は、ゾーンⅢの位置にシャドウ部分EV値を合わせます。(ISO100の例)



輝度差露出設定方法ゾーン計算尺3

さらに、上の写真は、シャドウ部分が5EVでハイライト部分が13EV、輝度差が8EVの時の場合の例です。

輝度差が8EVの時は、ゾーンⅠの位置にシャドウ部分EV値を合わせます。(ISO100の例)

輝度差が中間値の時は、その間に割り振ります。

表にしますと、

シャドウ配置ゾーン輝度差
ゾーンⅢ2EV
ゾーンⅡ+2/33EV
ゾーンⅡ+1/34EV
ゾーンⅡ5EV
ゾーンⅡ-1/36EV
ゾーンⅡ-2/37EV
ゾーンⅠ8EV

上記のようになります。

結局のところ、これは一体何がどうなっているのかと言いますと、

シャドウとハイライトの中間値を基準にして考えると、輝度差が8EV~2EVにかけて、露出量が±0EV~-1EVになる

ということです。

つまりは、

シャドウ配置ゾーン輝度差S/H中間値ズレ
ゾーンⅢ2EV-1.00EV
ゾーンⅡ+2/33EV-0.83EV
ゾーンⅡ+1/34EV-0.66EV
ゾーンⅡ5EV-0.50EV
ゾーンⅡ-1/36EV-0.33EV
ゾーンⅡ-2/37EV-0.16EV
ゾーンⅠ8EV±0.00EV

と、なります。

シャドウ部分の測光値と、ハイライト部分の測光値との中間値というのは、言ってみれば「平均測光値」に値する訳ですから、中央部重点測光と、多少の違いはあれど、ほぼ同じと考えて良いでしょう。

この「輝度差露出設定方法」を使用した露出決定では、コントラストの弱い被写体は平均測光に比べてマイナスに補正され、また、コントラストの強い被写体は平均測光そのままの露出に設定されます。

この露出設定システムは、私の求めていた「暗いものは暗く、明るいものは程々に明るく撮影する」という露出設定に、ピッタリとフィットします。

私はスポットメーターに付いている計算尺に、輝度差を示したシールを貼って使用しています。

 

【フィルムカメラ写真・露出計の使い方】輝度差露出設定方法 ゾーン付き計算尺使用例

 

経験や勘に頼った、その場での「補正」をすることなく、決められた通りにスポットメーターで測光し、計算尺が示したシャッタースピードと絞りを設定するだけで、思い通りの「絵」を描くことが可能になりました。

ただし、今回は私のフィルムカメラシステム上での設定方法となりますので、もし、このシステムを試してみて、全体的に薄く仕上がってしまった場合は、「シャドウ配置ゾーン」を1段ずらすことを試していただきたいと思います。

具体的には、シャドウを配置するゾーンをⅠ・Ⅱ・Ⅲではなく、Ⅱ・Ⅲ・Ⅳにします。

もしくは、スポットメーターを使って輝度差が8EVの被写体を探して、それを中央部重点測光のカメラで測定してみて、同じ露出が得られるのなら、そのシャドウ部のゾーン配置は合っていると言えます。

 

輝度差露出設定方法により撮影した作例写真

 

今回ご紹介した「輝度差露出設定方法」にて撮影した作例写真です。

【撮影データ】

  • 撮影カメラ:PENTAX LX
  • 撮影レンズ:SMC PENTAX-M 40mmF2.8・50mmF1.7・28mmF2.8
  • 使用フィルム:Rollei retro 80S
  • 現像液:PMKパイロ現像液(B液炭酸ナトリウム)
  • 使用スポットメーター:sekonicビュースポットメーターL-438

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最後に・・・

今回の「スポットメーターによる輝度差を利用した露出設定方法」は、ゾーンシステムの考え方を活用して、自分好みの写真を撮るにはどうしたら良いのか?ということから生み出した露出設定方法です。

まぁ、多くの人には受け入れてもらえないでしょうが、こんなことを考えることが趣味の面白さであったりもします。(^^)

個人的には、シャドウにディテールが乗る限界の薄いネガで、コクのある写真に仕上げるのが私好みですが、こればかりは十人十色ですからね。

でも、私と写真の好みが合う方は、是非、この「スポットメーターによる輝度差を利用した露出設定方法」を試してみて下さい。結構、キマりますよ。(^^)

 

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