自家製発酵器熟成|葉巻熟成方法とその考え方
葉巻の熟成を加速させる”自家製発酵器”発案までの経緯
まず最初に、この記事で取り上げている”自家製発酵器熟成”は、この”葉巻/シガー初心者の喫煙レビューブログ”を執筆している私、北原が独自に考案した葉巻熟成方法であり、葉巻を加湿・熟成させる一般的な葉巻保管方法とは異なり、葉巻業界、葉巻愛好家、並びに科学者等々の専門識者には全く認められていない葉巻熟成方法であることを先に伝えておきたいと思います。
そのことを理解した上で、この記事を読み進めていただければ幸いです。
葉巻を熟成させるための条件とは?
葉巻(プレミアム・シガー)が紙巻きタバコやドライシガーと大きく異なるのは、適切な湿度で管理された空間(箱又は部屋)で保管する必要があることです。
その理由は、葉巻には紙巻タバコのように保湿剤(プロピレングリコール等)が添加されていないことと、葉巻はワインのように熟成させると味が良くなることが知られており、熟成には適切な湿度(湿気)が必要だと考えられているからです。
葉巻を熟成させるには、ヒュミドールと呼ばれる保湿剤が入った葉巻保管箱に葉巻を入れて管理する必要がありますが、その温度・湿度は、18℃~21℃・68%~72%に設定することが望ましいとされています。
葉巻を熟成させるための適切な温度が18℃~21℃とされているのは、甲虫類(シバンムシ)の卵が葉巻に付着していた場合に孵化しやすい温度が24℃以上であることから、それ以下の温度が推奨されていることと(※注1)、適切な湿度を示すにあたって、湿度(相対湿度)は温度によって湿気の量(絶対湿度)が変化するため、その基準を明確にするために表示していることが考えられます。
つまりは、葉巻の熟成を促進させるには、適切な湿度(68%~72%)は必要ですが、推奨されている18℃~21℃という温度は、決して葉巻の熟成を促進させるための温度では無いということを理解する必要があります。
タバコ葉を発酵させるための条件とは?

”タバコ葉の発酵” 出典:”ロッキーパテル” https://www.rockypatel.com/cigar-sorting-fermentation/#PageAnchor

”タバコ葉の発酵” 出典:”ペルドモ” https://www.perdomocigars.com/new-gallery-3/uvhc511y26k2oujkvr22472fk9mic9
次は、葉巻の熟成を考えるために必要な、”タバコ葉の発酵”について考えてみたいと思います。
一般的にタバコ葉の発酵は2度の工程を経て行われ、残留した水分を放出させることを主とした一次発酵では、乾燥小屋でしっかりと乾燥させたタバコ葉を”ピロン”と呼ばれる山の状態(高さ1~3フィート)に積み上げることで発酵させ、中心部の温度が35℃になったら解体し、再度組み直すということを繰り返しながら約30日間発酵させます。
本格的な発酵を目的とした二次発酵では、選別済みの一次発酵を終えたタバコ葉に噴霧加水し、”バロ”と呼ばれるより高い山の状態(高さ4~6フィート)に積み上げることで、水分とタバコ葉の自重によって一次発酵よりも強い発酵が促され、中心部の温度が42℃~60℃になったら解体し、再度組み直すということを繰り返しながら約60日間~それ以上の期間発酵させます。
上記の発酵工程から知り得ることは、”タバコ葉は、葉と葉が圧着することで発生する熱によって発酵が促進される”ということです。
一部の葉巻メーカーでは、三次発酵を行なっているところもありますが、その話は後で触れたいと思います。
タバコ葉の熟成方法からヒントを得た葉巻の自家製発酵器熟成とは?

”ベールの作製” 出典:”シガーアフィショナード” https://www.cigaraficionado.com/article/a-day-with-davidoff

”ベールの熟成” 出典:”シガーアフィショナード” https://www.cigaraficionado.com/article/a-day-with-davidoff
次に、葉巻の熟成を考えるために必要な、”タバコ葉の熟成”について考えてみたいと思います。
2度の発酵工程を終えたタバコ葉は、油圧プレス機を用いて麻袋等に詰め込まれ、”ベール・ルーム/Bale Aging Room”と呼ばれる保管庫で、約2年〜10年以上の長い期間熟成に入ります。
このタバコ葉の熟成期間こそが、葉巻の味と価格が決まる重要な要素であり、熟成期間が長ければ長いほど味も良くなり、タバコ葉の業者間取引価格も高くなると私は捉えています。
各葉巻メーカーは、製造した葉巻のストック数よりも、この”ベール”と呼ばれる袋詰めのタバコ葉の保有数を重要視しており、それは同じブレンド内容の葉巻であるならば、”ベール”ストックが続く限り、何千本何万本でも同じ味の葉巻が作れることを意味しているようです。
しかしながら、熟成期間が長いタバコ葉で作られた葉巻は旨いものの、価格が高くなってしまうという問題を抱えていることから、市場にはマーケティングの観点から熟成年数の短いタバコ葉が使用されたリーズナブル系葉巻が数多く存在しています。
このリーズナブル系葉巻を、短期間で旨い葉巻に変貌させることを目的として考案したのが”自家製発酵器熟成”です。
その方法を模索するにあたっては、先に記載した”タバコ葉の発酵”から多くのヒントを得ました。
特に参考としたのは、一部の葉巻メーカー(コイーバやペルドモ)で行われている”三次発酵”です。

”バレルエイジドによる3次発酵” 出典:”シガージャーナル” https://www.cigarjournal.com/from-barrel-to-box/
垂直統合型の葉巻メーカーである”ペルドモ”では、三次発酵させたラッパーを使用していることで有名ですが、2度の発酵工程を終えたタバコ葉をバーボン樽に詰めて6ヶ月間~2年間ほど熟成させる際、施設内の温度を35℃に設定して管理していることに着目しました。
この三次発酵は、本格的にタバコ葉を発酵させる訳ではなく、謂わば”軽微な発酵を伴う熟成”と呼ぶ方が適切と言えるでしょう。
2度の発酵工程を終えたタバコ葉は、既に十分な発酵が行われた状態にあり、さらに本格的な発酵をさせてしまうと、”ニック・ペルドモ”曰く、”タバコ葉が燃え尽きた状態”になってしまうとのことです。
タバコ葉を発酵させるには、大量のタバコ葉(総量1トン~2トン)を積み上げることでタバコ葉どうしが高圧着状態となって本格的な発酵が始まりますが、このバーボン樽熟成ではタバコ葉に高い圧力はかかっていないことから本格的な発酵が始まることは無いものの、施設内温度を35℃に管理することで”軽微な発酵を伴う熟成”状態を維持しています。
葉巻もタバコ葉が密着した状態にあると言えますが、低圧着状態であることから自然温度環境下で発酵が始まってしまうことは無いものの、ヒュミドール内の温度を45℃~50℃に強制加温すると葉巻内部では発酵が始まってしまいます。
葉巻が発酵してしまうとアンモニアが発生してしまい、苦みが強くてまともに吸える状態では無くなってしまいます。(※噴霧加水した葉巻をジップロックに入れた状態で実証済み)
上記のことから、葉巻の熟成を促進(加速)させるには、発酵が始まる寸前の”軽微な発酵を伴う熟成”状態にすることが重要であり、そのためには、
- 湿度68%~78%の湿度管理下に葉巻を置くこと。(より早く熟成させようと葉巻に噴霧加水等を行うとアンモニア水が発生してしまうためNG)
- 35℃以下(30℃~35℃)の温度管理下に葉巻を置くこと。(本格的な発酵状態となる45℃~60℃にするとアンモニアが発生してしまうためNG)
- 湿度の維持と風味を良くする目的として、葉巻をジップロック等を使用した密封状態で上記の温湿度管理下に置くこと。
上記の条件を満たす環境に葉巻を置くことで、葉巻の熟成を加速度的に促進させることが出来ます。
自家製発酵器の作り方

自家製発酵器製作に必要な材料
私が今現在使用している自家製発酵器に使用する材料と葉巻熟成に必要な材料は下記となります。
- 保冷保温バッグ(ウーバーイーツ等が使用しているもの)
- パネルヒーター(爬虫類飼育用)
- デジタル温湿度計
- ビニール製密封袋(ジップロック等)
- 加湿器(小さな容器にオアシスを入れたもの)
- プロピレングリコール(保湿液)と精製水
- 72%ボベダ/Boveda湿度コントロール剤
- 熟成させる葉巻(セロファン包装を剥がしたもの)
- 電子秤(0.01g精度のデジタル計量器)
理屈さえ理解していれば、自家製発酵器は誰でも簡単に製作することが出来ます。
私の製作例では、保冷保温用のバッグ(W36cm×D28cm×H25cm)を使用していますが、発砲スチロール製の箱の内側にアルミ断熱シートを貼り付けたものの方が、より保温性を高く保つことができるでしょう。
パネルヒーターは、サーモスタット(温度設定機能)が付いたものは使用せずに、10段階に温度を調節できるもの(出力14w・W28cm×D15cm)を、保冷保温バッグの内側側面に両面テープで接着して使用しています。
夏は出力4/10段程度でバッグ内中心部温度を30℃~35℃にキープできますが、真冬は最大出力10/10段でも30℃をなんとか超える程度ですので、出来ればもっとワット数の高いパネルヒーターを使用するか、パネルヒーターを2枚に増設するか、又は箱の保温性をもっと上げた方が良いだろうと考えています。
保冷保温箱とパネルヒーターを購入する際は、パネルヒーターの大きさから箱の大きさを決めるか、又はその逆での選択となりますが、パネルヒーターの出力は面の大きさで決まるため、どうしても大きな箱が必要となってしまうようです。
ちなみに、パネルヒーターの商品説明欄には”36℃~53℃”等の能力表記がありますが、実際には設置する温度環境に左右されることもあり、特に冬場での箱の中心部はその温度に到達しないことがあることを伝えておきたいと思います。
出来れば私の製作例ではなく、発砲スチロール製の箱の内側にアルミ断熱シートを貼り付けた、より高い保温性がある自家製発酵器を製作されることをお勧めします。
自家製発酵器での葉巻熟成方法

自家製発酵器の準備が出来たら、次はその使用方法を説明したいと思います。
使用するものは先に記載したものと重複しますが
- デジタル温湿度計
- ビニール製密封袋(ジップロック等)
- 加湿器(小さな容器にオアシスを入れたもの)
- プロピレングリコール(保湿液)と精製水
- 72%ボベダ/Boveda湿度コントロール剤
- 葉巻(セロファン包装を剥がしたもの)
- 電子秤(0.01g精度のデジタル計量器)
となります。
まずは熟成させる葉巻のセロファン包装を剥がし、その重さを0.01g単位で計量しておきます。
次に、ジップロックにデジタル温湿度計と加湿器(私の場合はプロピレングリコールと精製水を50:50で希釈した保湿水溶液をオアシスに湿らせた自家製加湿器を使用)と72%ボベダと葉巻を入れて密封します。
自家製発酵器内の中心部温度が30℃~35℃になるようパネルヒーターの出力を調整して、上記の袋を置きます。
夏場と冬場の大きく温度が変化する時期だけでなく、2~3日に1回は温度と湿度を確認して、出力の微調整や袋の置き場所をずらすことで温度を管理し、保湿水溶液(又は精製水)を補充することで湿度を管理する必要があります。
ジップロック内の温湿度計の温度は、発酵が始まる温度とされている35℃を超えないように調整しますが、湿度は最大78%まで上昇しても問題ありません。
但し、湿度が80%を超えてくるとジップロック内に水滴が発生して葉巻が濡れた状態になってしまい、アンモニア水が発生してしまうことがあるため、十分に注意して下さい。
自家製発酵器熟成を実施する期間は、3週間以上の熟成で十分な効果があることを確認しています。
但し、取り出して直ぐさま喫煙を始めるのではなく、通常のヒュミドールに1週間ほど戻して、いつもと同じ加湿状態にしてから喫煙することをお勧めします。(※ドライシングしてからの喫煙を推奨)
自家製発酵器熟成についてのまとめ
今現在の自家製発酵器熟成の方法を確立するまでに、約1年程の期間を費やしていますが、その間には数々の馬鹿げた(?)実験を繰り返し、その殆どが失敗に終わっています。
”不味い格安葉巻を、どうにかして旨い葉巻に変貌させたい”ということをテーマに、その方法を模索してきましたが、当初は二次発酵の理論を用いて、葉巻に高温スチーマーで加湿してから40℃の自家製発酵器内で発酵させたり、水を入れた鍋の上に網を置き、その上に葉巻を置いて逆さにした鍋で蓋をしてから1時間以上蒸し上げるなんてこともしました。(^^;)
その当時は、格安葉巻に酸味や鋭さを感じるのは発酵が不十分であることが理由だと考えていたため、ならば自分で葉巻を再発酵させてやれば良いと思っていました。
しかしながら、格安葉巻に不足しているのは発酵でなく、熟成が不十分なタバコ葉が使われているということを知ってからは、思うように事が進むようになりました。
よくよく考えてみると、たかが数か月で完了する発酵期間を少し短くした程度で、葉巻の価格を大幅に下げることなど出来る筈もありません。
葉巻の味は使用するタバコ葉の熟成年数に依るところが大きいと私は考えていますが、熟成期間が短いタバコ葉を使用した安価な葉巻であっても、この”自家製発酵器熟成”を用いれば嫌な酸味や鋭さを取り除いて、マイルドな喫味の葉巻に変貌させることが出来ると私は考えています。
あくまでイメージでの話となりますが、1ヶ月間の自家製発酵器熟成を行えば、通常のヒュミドールで6ヶ月間~1年間程度の加湿・熟成をしたときと同様の効果があると推測します。
但し、全ての葉巻に対して効果がある訳では無く、熟成年数の短い(2年未満)タバコ葉を使用した安価な葉巻に対しては高い効果を確認していますが、高級葉巻に分類されるような1本3,000円以上の葉巻に対しては殆ど効果を確認出来ていません。
また、理由は不明ですが、コネチカット種シェードラッパーを纏った葉巻に対しては、特に高い効果を発揮するように思えます。
味に関しては、嫌な酸味や鋭さが取り除かれるだけでなく、全般的にリコリス(甘草)やクローブ等のスパイスの味が追加されて、少し濃厚な喫味になるようです。
この”自家製発酵器熟成”を考案して理解したことは、”やり過ぎは禁物”ということです。
より早く熟成させたいという気持ちが逸り、葉巻に噴霧加水してみたり、温度を40℃以上に設定したりすると、まず良い結果は得られません。
既に私が、全て実証済みです。(^^;)
”葉巻の世界に近道は無い”ということを理解した上で、興味のある方はこの”自家製発酵器熟成”を試してみて良いかと思いますが、その際は全て自己責任にてお願いします。
※(注1) 万が一、甲虫類(シバンムシ)の卵が付着していた場合は孵化する恐れがあるため、チェックを怠らないようにして下さい。

