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【モノクロ35mmフィルムカメラ白黒写真の撮影・フィルム現像・印画紙プリント技術とその方法】
モノクロフィルムの特性を知ろう!
モノクロフィルム写真に興味をもったら、なにはともあれフィルムカメラが必要になります。
でも、ここではおすすめのモノクロフィルムをご紹介していきたいと思います。
何故、カメラより先にフィルムなの?と疑問に思うかも知れませんが、カメラよりも先にフィルムについて知っておく必要があるからです。
フィルムはデジタルカメラで例えると ” イメージセンサー ” にあたります。
あなたが今、デジタル一眼レフカメラを購入しようとしていると考えてみてください。
あなたが注視することは、デザインですか?大きさですか?それとも画質性能ですか?
きっとその全てを総合して考えるに違いありません。
フィルムカメラを選ぶ場合、広く普及していて一般的な35mmフィルムか、少し大きいサイズの中判フィルム(ブローニー判)か、ロールフィルムではなく1枚づつフィルムを交換する大判シートフィルムの4×5inch(シノゴ)や8×10inch(バイテン)フィルム等のどれを使用するかで、購入するフィルムカメラの種類も変わってきます。
また、一般的な35mmロールフィルムを使用するにしても、フィルムカメラボディによる写りの違いはほとんどありませんので、問題となるのはフィルムによる画質の差なのです。
ここでは、35mmモノクロフィルムを扱うことを前提に話を進めていきたいと思いますが、もちろん、最初から中判ブローニーサイズや、大判サイズの4×5シートフィルムをやったって問題ありません。
フィルム初心者は、 ” 35mmフィルムからスタートしなければならない! ” なんて言う決まりはありませんし、35mmフィルムが初心者用という訳でもありません。
フィルムが中判、大判になるに従って画質も高精細になる訳ですから、興味が湧くことも十分理解出来ます。(※35mm→864平方mm、120中判6×7→3864平方mm、4×5大判→12500平方mm)
ただ、中判、大判になるに従って、カメラはどんどん大きく重くなりますし、フィルム1コマあたりのフィルム費用も高くなります。(※35mm→約30円/枚、120中判→約90円/枚、4×5大判→約300円/枚)
大判に限っては、三脚使用が前提になりますので、撮影する被写体が限定されますし、フィルムも高価ですし、フィルム現像も基本1枚づつ行うため、多くの時間と労力を必要とします。
私は35mmロールフィルムしか使用したことがありませんが、手持ち撮影が出来る中判サイズフィルムカメラには昔から興味がありました。
しかし、私が欲しいと思っている中判カメラ(マミヤ7やプラウベルマキナ67等)の中古市場価格が、未だに20万円以上することや、ブローニーサイズフィルムの1コマあたりの価格が35mmフィルムに比べて3倍以上するともあって、中判フィルムカメラ写真をやる時期は今ではないと考えてます。
写真に限らず、私は今現在必要でない限り、 ” 買わない・行わない主義 ” であり、「これがあったら便利かも?」とか「いつか必要になるかも?」というものは購入しないようにしています。
本当に必要となった時に初めて、購入したり、行動したりするようにしています。
私は35mmモノクロフィルム写真を、ブランクを含めて40年以上やっていますが、もっと突き詰めていくことが出来ますし、まだまだ楽しめることが沢山あります。
例えば、 ” フィルムと現像液の組み合わせにより、中判サイズフィルムに迫る画質を追求する ” ことです。
結論から申し上げると、35mmフィルムの約4.5倍のフィルム面積を持つ中判フィルムと同等の画質にすることは不可能ですが、四つ切りサイズ程度の印画紙にプリントすることを前提とした場合、決して不可能なことではありません。(L判サービスプリントなら、どちらで撮っても同じでしょう)
フィルムの選択、現像液の選択、現像液の自家調合、現像タンクの撹拌方法等々により、中判フィルムに迫る画質に近づけていくことを試みるのです。
それが私の35mmフィルムから、未だ離れることが出来ない理由の一つです。
それだけフィルム写真というのは、奥が深いのです。
私が過去に使用してきた35mmモノクロフィルム
前置きが長くなりましたが、本題の35mmおすすめモノクロフィルムに話を戻しましょう。
まずは今までに私が使用してきたモノクロフィルムを、メーカー別に羅列してみました。
■Kodak(コダック)
- NEOPAN SSS(製造終了)
- NEOPAN SS(製造終了)
- Silvermax 100(現在製造中止)
- HR-50
- CMS20Ⅱ
■OLIENTAL(オリエンタル)
- NEW SEAGULL 100
- NEW SEAGULL 400
- Pancro 400
羅列してみると、使用してきたフィルムの種類が意外と少ないことに気付きます。
この他にも現行モノクロフィルムはまだまだ沢山あります。
アグファフォト、フェラーニア、ケントメア、コスモフォト、フォマ、ロモグラフィー、シネスティル、シュプール等々のフィルムメーカーが未だにモノクロフィルムを精力的に販売しています。
おすすめの35mmモノクロフィルム
過去に使用してきたモノクロフィルムの中で、特に多くを使用したフィルムは、私が特に気に入ったフィルムであり、また、おすすめも出来るフィルムです。
Kodak(コダック)
ADOX(アドックス)
- Silvermax100(現在製造中止)
Rollei(ローライ)
この3種が私がおすすめするモノクロフィルムです。
Kodak T-MAX 400 professional film
30年程前にライカでモノクロフィルム撮影していたときは、ほとんどこのKodak T-MAX 400またはT-MAX100を使用していました。
フィルム写真を再開した2年前の当初も、その当時の記憶からか、まずはT-MAX 400を選択しました。
このフィルムの良いところは、 ” どこのカメラ屋さんでも売っている ” ことと、1986年の発売から現在までの35年の間、ずっと製造・販売し続けているということです。
一度気に入ったフィルムを使い出すと、そのフィルムを多用することになりますので、長期に渡って販売しているフィルムというのは使用者にとっての安心感に繋がります。
T-MAX 400の性能面での特徴は、TRI-Xのような古典的粒子ではなく、平板粒子(T粒子)の新技術を採用し、極超微粒子を実現していることです。
線密度(1mm幅の中に何本の線を描けるか)は125〜200本/mmを記録し、それまで使用していたTRI-Xはその後殆ど使用しなくなってしまいました。
フィルムの粒子は細ければ細かいほど、被写体の艶感などの質感をより詳細に表現できるようになります。
また、フィルムの特性は、使用する現像液でも大きく変わります。
否、現像液の種類が増えた現在では、 ” フィルムの特性は現像液で決まる ” と言っても良いかも知れません。
このフィルムに合わせる、おすすめの現像液は、 ” Rodinal(ロジナール) ” です。
ロジナール現像液の特徴はズバリ、 ” バリシャープ ” です。
世界最古の現像液と言われているロジナール現像液ですが、その当時はフィルムの粒子が粗かっため、この現像液で現像すると粒子が目立ちすぎる傾向がありましたが、極超微粒子であるこの ” T-MAXフィルム ” と組み合わせると、それほど粒子が目立つことなく、バリシャープな画質を得ることが出来ます。
ADOX Silvermax 100 film
フィルム写真を再開した2年前から使用し始めた、ADOXの最新フィルムです。
最新とはいえ、TRI-X等と同じ古典的粒子のフィルムです。
ADOX社は旧アグファの技術や設備を受け継いだ会社ですので安心感があります。
Silvermax 100の性能面での特徴は、 ” 14階調のトーンを記録出来る ” こと。
通常のフィルムでは、8〜10EV差程しか記録出来ないところを、更に4EVも記録出来るなんて!?
この宣伝文句を聞いたとき、「私が求めていたのはコレだ!」と思い、以降、私のお気に入りのフィルムとなりました。
14EV差の階調をフィルムに収めるには、Silvermax 100フィルム専用に開発された ” ADOX Silvermax現像液 (SUPR社)” を使用することで可能となります。
指定現像時間よりも短い時間で現像して、ネガを見た目薄く仕上げることが、私が得たこのフィルムを使いこなすコツです。
本当に14EVの階調を記録出来ているかは、正直分かりませんが、良いトーンを描く、良いフィルムだと思います。
しかし、昨年、製造中止となってしまいました。(T_T)
今現在、ADOX社は過渡期に入っているようで、今まで外注していた工程も機械を導入して自社で行うようにするなどの変革が行われています。
もしかするとまた製造再開するかもしれないと思い、おすすめフィルムとして紹介させていただきました。
Rollei RETRO 80S film
このモノクロフィルムは、ADOX Silvermax 100フィルムが急遽製造中止になったおかげで見つけることが出来たフィルムです。
今では、このフィルムが描くトーンは、私の ” 絵づくり ” に欠かせないものとなっています。
何がきっかけで良いことが起こるかなど、分からないものですね。
このRollei RETRO 80Sフィルムを見つけるため、ビックカメラ有楽町店で取り扱っているスタンダードなモノクロフィルム10種ほどをテスト撮影が出来たことも良い経験でしたし、なにより楽しむことが出来ました。
このRollei RETRO 80Sは、旧アグファ社の ” Agfa Aviphot Pan 80S ” と同様のフィルムであり、元々は航空写真用(空軍偵察機用?)に開発されたもののようです。
そのためか、特性曲線もS字カーブを描きますので、コントラストの良い絵を描きます。
フィルムベースにポリエステルを使用しており、ベース面が透明に近いため、しっかりとした黒色を描くことが出来ます。
さらに、線密度は285本/mmという、ISO80の中庸感度フィルムとしては驚異的な数値を記録し、四つ切り程度へのプリントではほとんど粒子を感じることはありません。
このRollei RETRO 80Sフィルムの扱いが難しいところは、シャドウ部がストンと落ちやすく、シャドウディテールを得にくいという特性があるところです。
それを改善するため、現像液を変えたり、自家調合現像液の薬品配合比率を変えたり、現像時間を変えたり、撹拌の間隔と回数を変えたりと、数十本のフィルムテストを行った結果、自分好みの ” 絵 ” に到達することが出来ました。
このRollei RETRO 80Sに組み合わせる、おすすめの現像液は、 ” PMKパイロ現像液 ” です。
日本では販売されていないため、海外から個人輸入することなりますが、素晴らしい現像液です。
今のところ、 ” Rollei RETRO 80S × PMKパイロ現像液 ” の組み合わせは、私にとってのベスト・オブ・ベストです。
おすすめの高精細モノクロフィルムは?
最後になりましたが、この投稿タイトルである「おすすめの高精細モノクロフィルム」をご紹介したいと思います。
ADOX CMS20Ⅱ film
このフィルムには、度肝を抜かれること必至です!
線密度は驚愕の800本/mmを叩き出します!
これは、一般的なフィルムの4倍〜5倍の高精細さということになります。
と言うことは、35mmフィルムカメラにこのADOX CMS20Ⅱを使用すれば、中判フィルムカメラに一般的なフィルムを装填して撮影した画質と同じになると言うことです!
ついに中判フィルムカメラ画質に、35mmフィルムカメラが追いつきました!(^^)
しかし、その高画質と引き換えに、手持ち撮影を捨てなければなりません。
フィルム感度はISO20、否、実際にはISO12ぐらいでの撮影が基本となるからです。
このフィルムは、いわゆる、 ” コピーフィルム ” と呼ばれるもので、本来は印刷物の活字などを複写撮影するフィルムであり、 ” 白と黒 ” しか表現出来ないフィルムです。
そのフィルムを、ADOX(SPUR社)独自の軟調現像液の力で ” グレートーン ” を作り出しているのです。
私が高校生の頃、天体写真に使用する定番のフィルムに ” Kodakテクニカルパン2415 ” というフィルムがありましたが、そちらは水素増感をして相反則不軌を無くして使用するという特殊なものでしたが、それもこのADOX CMS20Ⅱと同じ系統のフィルムと言えます。
このADOX CMS20Ⅱは素晴らしいフィルムなのですが、私は手持ち撮影を基本としているため、残念ながらこのフィルムを常用フィルムとすることが出来ませんでした。
このように、フィルムカメラ写真は、デジタルカメラ写真のように「お金に糸目を付けなければ、多くの問題を解決出来る」ということがなく、「何かを得るためには、何かを捨てなければならない」という世界なのです。
そんなフィルム写真の世界に、貴方もハマってみませんか?
また、Rollei RETRO 80S FilmとPMK Pyro Developerを使用して撮影したプロジェクトである「The Other Side of Tokyo,Japan」写真展サイトも併せてご覧下さい。↓
https://www.teikichi.com/photography/
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